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第58話 株主総会で勝つために

last update تاريخ النشر: 2026-06-17 18:25:10
 病院へ行く前に、もう一つだけ片づけることがあった。

 仮部屋の小さなダイニングテーブルで、私は業務用の端末を開いた。

「株主総会で勝つために、外部の支援が必要になります」

「資金を入れるという話か」

 朔弥さんの声が硬くなった。

 当然だ。資金を入れれば持分は薄まり、社長としての権限にも影響する。

「いずれは必要です。でも、今ではありません」

 総会前に資金を入れれば、一条側は必ず言う。

 高瀬真尋が、御門を外へ売ろうとしている、と。

「もちろん、あなたの経営権を削る形にはしません」

 朔弥さんの肩から、わずかに力が抜けた。

 それから、短く頷く。

「今回は資金を入れる話ではなく、株主に判断材料を示すための外部支援が必要です」

「城戸はどうだ」

 朔弥さんが言った。

 私は顔を上げた。

 朔弥さんからその名前が出るとは思っていなかった。

「城戸さん、ですか」

「ああ。ホテル側の提携先にも、再建案件を見る投資家にも顔がある。御門を買わせるためじゃない。正式な窓口を作るためだ」

 嫉妬ではなく、社長として使えるカードを見ている顔だった。

「……その
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  • 子どもはまだかと責められ、夫には離婚を告げられましたので、都合のいい妻は卒業します   第119話 シーツの下に、生温かい感触が広がっている

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  • 子どもはまだかと責められ、夫には離婚を告げられましたので、都合のいい妻は卒業します   第5話 次の嫁がいる食卓

     ダイニングルームに入った瞬間、足が止まった。  義母の冴子、その隣には祖母の千鶴、向かいには朔弥さん。そして、夜の席にいることがあまりに自然すぎる一条澄麗。  胸の奥で脈がひとつ大きく跳ねた。嫌な予感だけが、遅れてはっきり輪郭を持つ。  澄麗は淡いグレージュのセットアップに細いパールを合わせて、まるで最初からこの家の夜の食卓に馴染むために育ってきたみたいな顔をしている。 「こんばんは、真尋さん」  澄麗がやわらかく微笑んだ。 「ごめんなさい、勝手にお邪魔してしまって。御門家とは家族同然のお付き合いですので、つい昔の癖で入ってしまいましたの」  私は一拍遅れて会釈した。  もう

  • 子どもはまだかと責められ、夫には離婚を告げられましたので、都合のいい妻は卒業します   第4話 もう、都合のいい妻ではいられない

    「真尋。今はやめろ」  掴まれた手首が痛い。  腹の奥が焼けて、呼吸が乱れた。  叫びたかった。この場で全部、ぶちまけたかった。  彼の顔を見た。  そこにあったのは、私への心配ではなく、場を乱された苛立ちだった。  胸の奥を、鈍いものが刺した。  そのとき、澄麗の声が届いた。 「ごめんなさい。私、何か失礼でしたか?」  澄麗は困ったように目を伏せる。  完璧だった。責めたほうが浅く見える形に、もう整っていた。 「……いいえ。お気遣い、ありがとうございます」  噛みしめた唇が切れ、舌の裏に鉄の味がした。  朔弥さんの手が離れる。  そこだけが、熱を持って痛んだ。

  • 子どもはまだかと責められ、夫には離婚を告げられましたので、都合のいい妻は卒業します   第3話 それ以上、口を開いたら

     昔、午前二時の会議室で、朔弥さんが紙コップのコーヒーを私の手元に置いたことがある。  御門ホールディングスを再建させようと二人で必死だったころ。  私の一番好きなオートミルクラテだった。 「まだやるのか」 「数字が嘘をついているので」  彼は私の肩越しに資料を覗き込み、すぐ近くで小さく息をついた。 「そういうところだ。せめて休むときは休め」  低い声が近すぎて、あのころの私はそれだけで少し浮き足立った。  彼が私を気にかけてくれているのだと、本気で思った。  再建の底で、ああいうくだらないやりとりができる夜だけは、私たちはたぶん同じ側にいた。  なのに今は

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